考察:狂い火の起源。地下深くに眠る古き神
私は今まで、狂い火は三本指が生み出したものだと思っていた。
なぜなら、狂い火は三本指から与えられ、それによって狂い火の王となるからだ。
しかし、狂い火は三本指からもたらされたものだが、それがそのまま狂い火 = 三本指を意味するわけではないのかもしれない。
三本指は、狂い火を違う存在から伝染された可能性があるのだ。
そう考えた根拠は三つある。
三本指と狂い火の起源について、探っていこう。
根拠1. シャブリリの言葉
一つ目は、シャブリリの言葉だ。
かつてシャブリリは以下のように、語っていた。
王となる褪せ人よ
黄金樹の王都の下、遥か地の底に向かいなさい
そして、三本指と、その狂い火に見えるのです
狂い火を受領できれば、貴方は火種となり
もう、小娘をくべる必要はなくなります
…正しい王の道を歩むのです
混沌の王たるその道を
黄金樹を燃やし、打ち倒し
我らを別け、隔てる全てを侵し、焼き溶かしましょう
ああ、世に混沌のあらんことを!
世に混沌のあらんことを!
三本指と、その狂い火。
シャブリリは三本指と狂い火を別けて扱っていた。
また、文書「狂い火の主について」についてでは以下のような記述されている。
ローデイルの地下の底に
我ら、狂い火の主が囚われている
三本の指が
これらの言葉から、三本指=狂い火なのではなく、三本指は狂い火を宿している存在なのだと思われる。
狂い火と三本指は別の存在で、その狂い火の主が三本指という扱いだからだ。
しかしこれだけだと、三本指が狂い火を産みだしていると思う可能性のほうが高い。
そこで、二つ目の根拠だ。
根拠2. 祈祷:発狂伝染
二つ目の根拠は祈祷:発狂伝染だ。
発狂伝染には以下のように記されている。
狂える三本指に由来する祈祷その瞳に黄色い狂い火を燃やし
対象に掴みかかり、発狂を伝染させる
発狂は自術者自身にも蓄積する
褪せ人にだけ、効果がある
瞳と瞳で見つめ合う
それは、人の最も濃厚な接触であろう
狂い火は、病の名の通り、伝染するのだ。
これで、三本指は狂い火を自らが生み出したほかに、誰かから伝染させられた可能性が生まれた。
では伝染させられた場合、誰が元の持ち主だったのか?
それが、根拠3だ。
根拠3. 指紋石の盾
三つ目の根拠は指紋石の盾だ。
指紋石の盾とは、三本指がいた王都地下に置いてあった、指紋の刻まれた大きな石だ。
この石には、以下の記憶が遺されている。
びっしりと指紋の刻まれた、巨石の盾
最も重い大盾のひとつ
それは古い神の墓の一部であり
指読み無き指が、その言葉を刻んだ跡だという
それは、狂いのはじまりであったろうか
この盾が王都地下に置いてあったことから、王都地下は元は古い神の墓だったのだろう。
そして、指読み無き指が、その言葉を刻んだ跡であり、その跡こそが狂いのはじまり。
王都地下に三本指がいて、彼が狂った存在であることから、おそらくこの指読み無き指が三本指だ。
そして、この跡が狂いのはじまりという言葉から、三本指も元から狂っていた存在ではないことがわかる。
ここでようやく、二つの可能性が生まれる。
一つはこの狂い始めた時に、三本指が狂い火の力を得たという可能性。
そしてもう一つは、この時、三本指が古い神から、狂い火を伝染された可能性。
そう、三本指が居た場所が古い神の墓で、狂い火が他人に伝染できるものであることから、三本指もまた、古い神から狂い火を伝染させられた可能性が生まれるのだ。
さて、ではどちらのほうが可能性が高いだろうか?
どちらもありえそうだが、私はそのどちらも支持しない。
私は、この二つの可能性は両方とも正しいのではないかと思う。
なぜなら、狂い火は両方の要素を持っているからだ。
その両方の要素とは、瞳と、火だ。
狂い火と大いなる意志
まず狂い火は、発狂伝染からも分かる通り、瞳を通じで伝染する。
これは、大いなる意志の持つ力の特性だ。
かつて私が、考察:大いなる意志の力の正体。そのメカニズム、で語ったように、大いなる意志、そして二本指は瞳を通じて人を操る力を持っている。
祝福も、呪いも、瞳に顕れるからだ。
そして、三本指の名前と見た目からも分かる通り、三本指と二本指は同系統の存在だ。
故に、狂い火の持つ瞳を媒介に感染する特性は、三本指由来の特性だと思われる。
狂い火と古い神
しかし、火は違う。
大いなる意志が黄金樹を創り、巨人の火を禁忌としたように、大いなる意志と火は正反対の存在だ。
故に、火は三本指ではなく違う存在からもたらされたものだと思われる。
それが、古い神だ。
同じ王都の地下にいる血の君主モーグの与える祈祷:血授には以下のようにある。
血の君主モーグの、聖なる祈祷
姿なき母の身体に腕を差し込み
その血炎を前方に撒き、炎上させる
足を止めずに使用できる
地の底で、傷を望む真実の母に見えた時
モーグの呪われた血は炎となった
そして彼は、生まれついた穢れを愛したのだ
地の底で、真実の母に見えた時、モーグの呪われた血は炎を帯びた。
ではモーグが真実の母と出会っただろう、地の底とはどこだ?
それは、モーグがかつて幽閉された場所、その底。
つまり王都地下の底、三本指が座す場所だ。
そして三本指が座す場所とは、古い神の墓だ。
このことから、古い神と真実の母とは同一の存在であり、古い神は炎の力を与えることができるということがわかる。
よって、三本指はモーグが真実の母から炎を与えられたのと同様に、古い神=真実の母から、炎の力を与えられた。
それが三本指の性質と重なり、狂い火となった。
私はそう結論付けた。
狂い火は、古い神=真実の母の炎と、三本指の瞳を媒介する性質と、三本指が宿した狂気が混ざることで、産まれた火だ。
故に、狂い火の起源は、真実の母と三本指の両方にあるのだと、私は思う。
まとめ
- シャブリリの言葉、発狂伝染の瞳を媒介して伝染する性質、指紋石の盾の記憶から、狂い火は三本指由来ではない可能性がある
- 狂い火を分解すると、瞳、火、狂気、の三つに分解できる
- 瞳は大いなる意志由来の性質
- 火はモーグのように、三本指が座す場所に存在する古い神=真実の母から与えられた力
- 狂気は三本指が孕んだ狂気
- これら三つの要素が混ざり、狂い火は生まれた
- つまり、狂い火は古い神=真実の母と三本指の二つを起源とする火であると結論付けられる
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