カーリアの魔術騎士 ムーングラム
彼らはかつてカーリア王家に仕えたとされる魔術騎士である。
魔術と剣技を高いレベルで兼ね備えた彼らは、何れも一騎当千の英雄だった。
しかし、かつて月の女王に叙勲され忠誠を誓った魔術騎士たちも、月の女王レナラの錯乱。
そしてそれによる王家の衰退とともに、だれもいなくなった。
そう、私は聞いていた。
だれにって?
母親やそのまた母親、そしてそのさらにその上の母親……
子孫代々と語り継がれてきた話だ。
そう、私はそのいなくなった魔術騎士の子孫だ。
少なくともそう聞いていた。
だからかつて祖先が持っていたという魔術騎士の装備を手に入れること、そして魔術騎士の足跡を辿ることは私の狭間の地の探索において、大きな目的の一つだった。
そして私はレアルカリア学院の探索において、初めて、本物の魔術騎士に出会った。
カーリアの魔術騎士 ムーングラム。
魔術騎士の鎧と盾を身に着け、剣技と魔術を駆使して戦う彼は私が夢にまで見た一騎当千の英雄、おとぎ話の登場人物だった。
同時に、彼は忠義の騎士でもあった。
彼が守護していた場所はどこか?
カーリア王家の長、月の女王レナラが座すレアルカリアの大書庫。
そこに繋がる昇降機の前だ。
つまり彼は他の魔術騎士がカーリア王家を見限り姿を消した後も、一人で女王レナラを守り続けていたのだ。
これが忠義の騎士と言わずしてなんと言えばいいのか?
彼は強かった。
隙の無い攻撃、的確な防御、そしてこちらの隙を見て使われる魔術「カーリアの貫き」。
私が聞いていた通りの、魔術と剣技を使いこなす一騎当千の英雄だった。
戦っていて隙が無い。
一撃の威力も二回私が食らったら死んでしまうものだったし、回復しようとしたら即距離を詰めて攻撃してくる。
下手な攻撃をしたらしたで、盾によって剣や魔法すら弾かれ、致命的な隙をさらしてしまい、そのまま殺される。
そして何と言っても剣と杖の二刀流!
右手に剣、左手に杖を持った時、彼の本領が発揮される。
近距離を剣で、中距離を魔法で攻められ、一度攻撃を食らったら食らった後にローリングで避けようとしたら、その着地の隙に「カーリアの貫き」で体ごと貫かれ屠られる。
このコンビネーションに何度殺されたことか!
(興味がある方はこの追憶を見てほしい。剣と魔法のコンビネーションで綺麗に殺されてしまった。)
実際私は彼と戦って何度も死んだ。
もし私に祝福の導きによる復活がなければ、一度きりの殺し合いならば負けていたのは私のほうだっただろう。
だが戦って戦って戦って、最後に私は勝った。
幾多の敗北の末、私は勝利した。
あの魔術騎士に勝ったんだ。
殺した相手にこんなことを言われても彼もうれしくないだろうけど、それでも私は彼のことを忘れない。
偉大な先達、月の女王の魔術騎士ムーングラムのことを。
そして彼が私の憧れた魔術騎士そのものであったことに、感謝を。
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