雪の魔女ラニとの再会と契約の言葉
青い肌を持った、月のように綺麗で、どこか儚い姿をした彼女は、少し驚いた顔をした後、そう呟いた。
「あの時は、確かレナと名乗っていたか。」
「トレントも息災のようで何よりだが」
「褪せ人よ、何用があってやってきた?」
「招待状を出した覚えは、ないのだがな。」
私は少し気圧されたように沈黙した後、彼女の目をじっと見た。
「久しぶりね、レナさん。狭間の地を旅していれば、いつか会えるかもと思っていたけれど、まさかこんなところで会うなんて」
「用は……、とくにはないかな。また会って話してみたいな、とは思っていたけれど」
少しはにかみながら、そう言葉を伝える。
「そうか、特に用はないか。」
「面白い。ならばこの再会は、むしろ運命ということだ。」
「…」
彼女は一瞬ためらったかのように沈黙した後、契約の言葉を、私に向けた。
「お前、私に仕えぬか?」
「私は魔女ラニ。かつて死を盗み、今も暗き路を探している。」
「そしていつか、すべてを裏切り、すべてを棄てるだろう。」
「…どうだ、興味が出てきただろう?」
私をどこか試すように、上目遣いでそう聞いてくる彼女。
私は――
「うん。いいよ。私はすべてを知りたい。この狭間の地で何があったのか、なぜ褪せ人は追放されたのか、どうしてエルデンリングが砕けたのか、そのすべてを。」
「それにつながる道なら、私はあなたに仕えるよ。」
「よろしくね、ラニ? いや、我が主(マイマスター)?」
「…そうか、それはよかった。」
「お前は奇人だな。あんな誘いに乗ってくれるとは。」
「まぁ、私にはそれぐらいがよい。」
「これから、よろしく頼む。」
私の目を見てそう囁く彼女は、どこかうれしそうだった。
「さて、では早速働いてもらおうか。」
「ブライヴという半狼の戦士が、私に仕えている。」
「彼と組んで、見つけてほしいのだ。永遠の都、ノクローンの秘宝を。」
「階下にブライヴを呼んでおいた。話を聞くといい。」
彼女の言葉にうなずいて、下に降りようとすると
「ああそれと、軍師のイジー、魔術教授のセルブスもいるはずだ。」
「癖のあるものたちだが、気が向けば利用するがよい。」
「…きっと彼らも、そうするだろう。」
「馴れ合え、とは言わぬ。だが彼らも、お前を値踏みしたがろう。」
「新しく仕えるものなど、随分と久しぶりだからな。」
そう言う彼女は、やっぱり私の目にはどこかうれしそうに見えた。
今でも、この時の言葉は鮮明に思い出せる。
私は、この時の私は、自分でいった言葉がすべてだった。
知りたい、すべてを、この狭間の地のすべてを知りたい。
そのためなら悪魔との契約でもしてやろう。
そんな気持ちだった。
この人はゴッドウィンが暗殺されたその裏を知っている、そう気付いたから。
まさか彼女との関係が、ここまで深いものになるなんて。
そして彼女との縁が、ここまで深いものだったなんて。
その時の私には想像もできないものだったのだ。
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