考察:忠義の騎士 ブライヴの生涯





 忠義の騎士、ブライヴ。

神人ラニの義弟であり、二本指に選ばれたラニの影従。

大いなる意志の洗脳に抵抗し、最後までラニへの忠義を貫き続けた彼は、まさしく忠義の騎士だった。

彼の生き様を後世に遺すため、今こそ彼の生涯をまとめようと思う。


なお、ここで使用する歴史区分は私が作成した狭間の地の歴史年表の歴史区分を使用している。

読まなくても分かるように書いているつもりだが、わからない場合は年表を参考にしてほしい。



ゴッドフレイの征服

【ゴッドフレイの征服】の時代にブライヴは生まれる。
神人、ラニの影従として仕える運命を背負って。
ラニとブライヴ、二人は義理の姉弟として共に育った。


ブライヴはラニが生まれた時期と同時期であるゴッドフレイの征服の時代に生まれたと考えられる。
第二次リエーニエ戦役終結から、ゴッドフレイが追放されるまでの間だ。
以前、イジーはラニとブライヴについてこう語っていた。


ブライヴは、ラニ様の義弟なのです
母君、レナラ様もそれを認め、幼い二人は本当の姉弟のようでした
私もよく、遊び相手をさせて頂いたものです
ラニ様が肉体を捨て、神人たる暗い道を行くと決めた後は
ブライヴも私も、臣下として仕えることを選びましたが
…きっと誰も、あの頃を忘れてはいないでしょう
貴公、ブライヴをよろしく頼みます
あれは、昔から愚直です。貴公のような相棒が、必要でしょう


ブライヴはラニの義弟で、幼いころから本当の姉弟のように育ったという。
そしてその時はまだレナラも正気だったらしい。
このことから、二人はレナラが正気を失う、ラダゴンに捨てられる前から生きていて、共に義理の姉弟として育てられたことがわかる。

また、ブライヴは神人ラニの影従だった。
胴鎧:ブライヴの鎧(軽装)には以下の記憶が遺っている。

半狼のブライヴの胴鎧
使い込まれた、黒い騎士鎧
ブライヴは、ラニの影従であった
たとえ運命に背いてでも
決して裏切らぬ、味方であった

影従とは、二本指によって神人に与えられる従者である。
それは決して裏切ることない影であり、同時に二本指、そしてその裏にいる大いなる意志の意向に神人が従い続けるかを監視する見張り役でもある。
ブライヴは、生涯この影従という役割に縛りつけられていた。



陰謀の夜

【陰謀の夜】の時代、ラニは二本指の傀儡たる神人になることを厭い、陰謀の夜を企てる。
首謀者の一人としてラニ、実行犯として黒き刃が死のルーンの一部を盗み、黄金のゴッドウィンの魂とラニの肉体を殺害する。
ラニ、死亡したのち魂だけが人形に宿り、以後姿を隠す。
ブライヴ、生まれ落ちた運命に背き、ラニだけに仕えると誓う。


【陰謀の夜】の時代、ラニは陰謀の夜を企てて、自らの肉体を殺した。
そして死亡したのち魂だけが人形に宿り、以後姿を隠した。
ブライヴはこの時ラニに従い、ラニと共に姿を隠したのだと思われる。
ブライヴの持つ特大剣:王家のグレートソードには以下の記憶が遺されている。
カーリア王家の意匠が施されたグレートソード
半狼のブライヴの得物
生まれ落ちた運命に背き
ブライヴが、ラニだけに仕えると誓ったとき
この剣は誓いの証となり、冷たい魔力を帯びた


彼は大いなる意志と二本指に従うという生まれ落ちた運命に背き、ラニだけに仕えると誓ったのだ。

そしてその時、王家のグレートソードはラニの魔力である冷たい魔力を帯びたのだろう。

彼はこの時、ラニに忠誠を誓った。

そしてこの誓いは生涯破られることはなかった。



現代 ―リムグレイブ―

ブライヴ、裏切者の猟犬騎士を狩る最中、一人の褪せ人に出会う。
その褪せ人と共に裏切者の猟犬騎士、ダリヴィルを討ち取る。


時代は一気に現代、我々がいる時代にまで進む。
ブライヴは裏切者である猟犬騎士を追っていた。
おそらく、カーリア王家を裏切った騎士なのだろう。
女王レナラとの戦いで、レナラは猟犬騎士を召喚していた。
このことから、猟犬騎士はカーリア王家に仕えていたのだと思われる。
カーリア王家を裏切った猟犬騎士を誅するために、ブライヴは猟犬騎士を探していたのだ。
これが私と、ブライヴの出会いだった。


現代 ―ノクローンの捜索―

ブライブ、褪せ人と共に永遠の都、ノクローンを捜索する。
星砕きのラダーンがラニの運命を留めていることを知り、ラダーン祭りに褪せ人と共に参加。
ラダーンを多くの褪せ人と共に討ち取る。


ラニに仕えた後、私たちに初めて与えられた任務は失われた永遠の都、ノクローンの捜索だった。
しかし地下に降りても、ノクローンにどうやって進むのかがまったく分からなかったため、私はセレン先生に助けを求めた。
セレン先生いわく、

カーリア王家の運命は、星によって動く。お前の仕える、ラニの運命も同じことだ。
だが、かつて将軍ラダーンが流れる星に立ち向かい、打ち砕いたとき、星の動きは封じられた。
…あの男は、星の封印なのさ。
だから、将軍ラダーンが死するとき、星もまた動き出す。
きっと、ラニの運命もな。

とのお言葉だった。
そのことを知った私たちはラダーン将軍を弔い、ラダーン将軍を討つための大祭、ラダーン祭りに参加した。


腐敗に侵されて狂ってなお、かのラダーン将軍は強かった。
とても強かったが、ブライヴ含め多くの褪せ人たちの協力の元、なんとかラダーン将軍を討つことができた。
そうして、星の封印が解かれ、星の運命が動き始めた。


現代 ―ブライヴの最期―

ブライヴ、軍師イジーに謀られ、封牢に閉じ込められる。
しかし封牢を自力で脱出し、ラニを守るため、単身でラニの魔術塔に赴く。
襲い掛かる黒き刃たちを切り捨てるも、二本指の力に晒され続け、正気を失う。
しかし、その状態でなお、ラニへの忠義を貫き続け、塔の前で立ち続けた。
最期、同じラニに仕える騎士だったある褪せ人に介錯され、その生涯を終えた。


封牢に閉じ込められているブライヴを見た後、私は彼をすぐには解放せず、イジーを問い詰めた。
彼が酔狂でこんなことをするとは思えなかったから。
すると彼はこのように語った。

…ブライヴと話したのですか
…いいでしょう。貴公には、お伝えしておきます
ブライヴは、二本指がラニ様に与えた従者。決して裏切ることない影
だが、ラニ様が神人として、二本指の傀儡たるを拒んだとき
…影は狂い、ラニ様にとって恐ろしい呪いとなるのです
…それは運命。ブライヴの意志など、何の意味も持たないでしょう
苦しいことですが、封じておくしかないのです。ラニ様のために


影従とは二本指から与えられた神人の従者であり、決して裏切ることない影である。
…そして同時に、神人が二本指の傀儡たるを拒んだ時、反逆した神人を始末する、処刑人でもある。
それが、彼の背負った運命だった。
彼は、生まれながらにして敬愛する義姉の枷であった。

しかし、彼はその運命に反逆した。
自力で封牢から脱出し、ラニの魔術塔にまで至るも、ラニを害さず、逆にラニを襲う黒き刃の刺客からラニを守っていた。


最終的に彼は耐えきれず狂い、私に襲い掛かってきた。
彼にはもう、敵と味方の区別がつけられなかったのだろう。
それほどまでに、二本指、そして大いなる意志の力は強大だった。
彼はただラニを守る、その一念で塔の前で彼女を守っていたのだ。

彼に襲われた私は、戸惑い、迷い、だが最後には決断した。
彼のためにも、彼をここで討つ、と。


そうして私は彼を、介錯した。



さようなら、ブライヴ。
あなたは最期までラニへの忠義を貫き続けた、まさしく忠義の騎士でした。

そしておやすみなさい、ブライヴ。
貴方の義姉は私が必ず守るから。
だから安心して、ゆっくり休んで。


最期の瞬間、彼が少し笑ったように感じたのは私の気のせいだっただろうか?

…私の願望かもしれない。
けれど、死したのち、彼の魂に月の導きがあることを、私は祈りたい。




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