考察:黄金律とは何か? 運命の死を取り除くことで完成した祝福の循環システム




今回は黄金律とは何か? そしてなぜ運命の死を取り除くことによって黄金律ははじまったか、という内容について述べたいと思う。

死王子の修復ルーンにはこうある。

死衾の乙女、フィアが宿したルーン

エルデの王が、壊れかけのエルデンリングを掲げる時

その修復に使用できる

それは、2つの欠環が合わさった聖痕であり

死に生きる理を、律の一部とするものである

黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった

ならば新しい律は、死の回帰となるであろう


黄金律は、運命の死を取り除くことで始まったとはどういうことか?

この疑問についての考察をまとめた、そこから黄金律とは何かについて語ったものが本稿である。



「考察:還樹の謎、黄金樹の成立過程。原初の黄金樹が赤味を帯びていた理由とは?」の稿で、私は以下のように述べた。


まず大いなる意思によって黄金の流星が永遠の都に降り注ぎ、永遠の都は滅びた。

そしてその滅びた永遠の都に住んでいた古き生命は、黄金樹によって吸い上げられ生命の坩堝となり、生命の坩堝を栄養として黄金樹は成長した。

だから原初の黄金樹は赤味を帯びた黄金色をしており、その赤味とは古き生命の血の赤である。

しかし古き生命の量は有限であり、恵みの雫が尽きぬ豊穣の時代はごく短く、黄金樹は信仰となっていった。

その信仰の代表的なものが還樹の儀式であり、黄金樹による祝福がかつて吸い上げた永遠の都の古き生命だけでは足りず、黄金樹のもたらした強い祝福をまた黄金樹に還さなければならなかったから生まれた信仰儀式である。


しかしその還樹による祝福の循環には穴がある。それこそが運命の死である。

なぜ運命の死が穴なのか。

それを説明する前に、まず黄金樹以前の時代の死について説明しよう。



黄金樹以前の時代の死

黄金樹以前の狭間の地における死とはなにか?

それはただ肉体と魂が消えることではない。

死者は霊界に送られ、霊炎により焼かれ、やがて輪廻し再誕する。

それが狭間の地での死である。


武器:ヘルフェンの尖塔にはこうある。

ヘルフェンの尖塔

霊界において死者の道標となる灯火の樹

ヘルフェンの黒い尖塔を模した大剣

その灯火は祝福に似て

英霊だけが、それを見ることができるという

狭間の地には霊界があり、死者はそこに導かれていた。

また魔術:爆ぜる霊炎にはこうある。

爆ぜる霊炎

死に仕える者たちの魔術

杖を地に突き、霊炎の爆発を生じ

周囲の広範囲を焼き払う

まだ黄金樹無き頃、死は霊炎に焼かれた

死の鳥は、その火守りなのだ


黄金律無き頃、霊界に導かれた死者は霊炎に焼かれ、死の鳥はその火守りだった。

また武器:死儀礼の槍にはこうある。

死儀礼の槍

死の鳥、その羽に列することを許された

古代の祭司たちが抱く儀式の槍

死儀礼により、祭司たちは鳥の守護者となる

それは、遠い再誕の契約でもあるという


死の鳥の守護者は遠い再誕の契約を死の鳥と結んだ。霊炎に焼かれた死者はいずれ再誕するだろう。

さらに、盾:双鳥のカイトシールドにはこうある。

双鳥のカイトシールド

色鮮やかな双鳥が描かれた盾

それは、外なる神の使いであり

死の鳥たちの母でもあるという


死の鳥とは外なる神の使い、色鮮やかな双鳥の子供である。

そして、祈祷:毒の刃にはこうある。

毒の刃

腐敗に仕えんとする者たちの祈祷

右手の武器に、毒を纏わせる

足を止めずに使用できる

毒に生きる者たちは、腐敗を知っている

それは、誰にでも平等に訪れる生のための死

すなわち輪廻の理である


腐敗とは誰にでも平等に訪れる生のための死、輪廻の理である。


これらをまとめると以下のようになる。

黄金律無き頃、狭間の地には霊界があり、死者はそこに導かれていた。

霊界に導かれた死者は霊炎に焼かれ、死の鳥はその火守りだった。

死の鳥の守護者は遠い再誕の契約を死の鳥と結んだ。霊炎に焼かれた死者はいずれ再誕するだろう。

その再誕とは輪廻、輪廻転生の理である。

そしてその死の鳥とは外なる神の使いである双鳥の子供であり、おそらく同じ外なる神【腐敗】に関係している。


そして輪廻転生。これは黄金樹以前にも生きていた祖霊の民たちからも読み取れる。

祖霊の王の追憶には以下のようにある。

黄金樹に刻まれた

祖霊の王の追憶

祖霊とは、黄金樹の外にある神秘である

死から芽吹く命、生から芽吹く命

そうした、生命のあり様である


死してまた生まれ、生まれそして死す。

その繰り返しの末に祖霊に至ろうとしていた彼らの死生観は、まさしく輪廻転生に他ならない。

黄金樹以前の狭間の地は輪廻転生の理によって支配されていた。


運命の死を取り除くことで完成した祝福の循環システム

狭間の地を支配していた死とそのあとの輪廻転生は外なる神の権能であり、理だった。

ならば死の際に祝福を樹に再び還す還樹のシステムによっても、黄金樹の祝福は永遠とはならない。

間に違う外なる神の理、霊界と輪廻転生を通すからだ。

おそらくその過程で祝福は失われ、最低でも目減りするだろう。

輪廻転生に、前世で得た祝福を持っていけるとは思えないからだ。


運命の死とそのあとの輪廻転生によって、還樹による祝福の循環システムは完全ではなかった。

ではどうすればいいか?

簡単だ。

運命の死とそのあとの輪廻転生のシステムを壊してしまえばいい。

そうすれば祝福を盗まれることもなく、黄金樹の祝福は永遠のものとなる。


そして、運命の死は狭間の地から取り除かれ、黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった

これこそが黄金律。

黄金律とは、輪廻転生を通さないことによる、黄金樹からの祝福を黄金樹を通して循環させる永久機関のシステムである。

黄金律は死に生きる者を許さない。なぜなら死者の持つ祝福もまた、黄金樹のものだからだ。

そして黄金樹とは、死者からエネルギーを吸収し、そのエネルギーを祝福という形で変換し狭間の地に分け与え、そしてその祝福をまた死者から吸収するという媒介であり変換器であり吸収装置、黄金律の根幹を維持する装置である。

こうして、黄金樹を中心とした祝福の循環システムは永遠となり、黄金律ははじまった。



まとめ

まとめよう。
  • 黄金樹以前、狭間の地の死者は霊界に導かれ、霊炎に焼かれ、いずれ再誕する、輪廻転生を行っていた
  • その輪廻転生は外なる神の権能の一部であり理だった
  • 輪廻転生を通す限り黄金樹からの祝福が減り続けることを嫌った大いなる意志は運命の死を封じさせ、黄金樹を中心とした祝福の循環システムを永遠のものとした。
  • これこそが黄金律である
  • 黄金律とは、死者からエネルギーを黄金樹を通して吸収し、祝福として降らせ、また死者から祝福を回収するという、永遠の循環システムである
  • こうして黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった

以上が今回の考察である。
書いていて思ったが、黄金律とはなんて緻密で美しいシステムなのか。
これはまさしく永久機関。
人類が望み続ける、人類の夢そのものだろう。
だが同時に、永遠は停滞であり、停滞は腐敗を生む。
そしてご存知の通り、エルデンリングは壊され、世界もまた壊れた。
輪廻転生を封じたまま循環システムだけが壊されたのならば、そうなることも当然だろう。
生者は死ねず、祝福だけが減り、新しい命もまた生まれない。
完璧だからこそ、崩れると脆い。
もしくは、その完璧なシステムの管理者が、感情を持つ人間であったのがよくなかったのか。

金仮面卿やラニの気持ちがよくわかる。
神は感情を持つべきではなかった。
あるいは神は地上を離れるべきだったのだ。





次の考察はこの考察からつながる最後の謎、【黄金樹の役割とエルデンリングの表す真の意味。狭間の地の収穫者、大いなる意志】について語りたいと考えている。
大いなる意志は何を考えてこんなシステムを作ったのか? その目的について語ろう。






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