考察:還樹の謎、黄金樹の成立過程。原初の黄金樹が赤味を帯びていた理由とは?





かつて私は【地下墓地の奥にあった、木の根に取り込まれた人々】の稿で、地下墓地で黄金樹の根に取り込まれた遺体をみつけて驚き、怖気が走ったことを覚えている。


図1 木の根に取り込まれた人々

木の根に人の遺体が取り込まれているのだ。
後にそれは還樹といい、狭間の地にいる人々にとっては最上の栄誉を持つ死に方だということを知った。
その時は異文化とはまことに不思議なものだ、くらいの感想で済ましていたが、狭間の地の謎を探索していくうちに、これは本当に人が、生命が黄金樹に取り込まれているのでは? と考えるようになった。

その考察で私は、大いなる意思が黄金の流星を落とすことで、かつて黄金樹のあった位置で繁栄していた名も無き永遠の都を滅ぼし、その上に黄金樹が根付いた、と結論付けた。(こう結論付けた詳細はアステールについての考察を読んでほしい。)
この考察が私に黄金樹とは何か? という謎について閃きを与えてくれた。
今回はこの還樹の謎、黄金樹の成立過程はどういうものだったのか。そして原初の黄金樹が赤味を帯びていた理由について考察したいと思う。

考察  還樹の謎 古い生命の残滓とは

なぜ狭間の地の民は還樹という埋葬方法が文化に根付いたのだろうか?

理屈としてはわからなくもない。

黄金樹は狭間の地に祝福と恵みをもたらす、すべてのはじまりのような存在だ。

死ぬときはその樹に還りたい、というのは先入観を除けばわからなくもない。

だが一つ気になっていたことがあった。

それはわが師、セレン先生の言葉だ。

かつて彼女はこう言っていた。


我らの魔術は、輝石の内に力を見出し、その力を揮う術だ。

ではその力とはなんであるのか?

…輝石とは、星の琥珀なのだ。

金色の琥珀が、古い生命の残滓を、その力を宿しているように

輝石には、星の生命の残滓、その力が宿っているのだよ

覚えておくがいい

輝石の魔術とは、星と、その生命の探求なのだと

今や、それを忘れた魔術師もどきばかりだからな


今考えるとこれは源流のことを話していたんだな、とわかるが、言いたいことはそこではなく、その前。

 金色の琥珀が、古い生命の残滓を、その力を宿しているように

の部分だ。

金色の琥珀とは何か?

それは黄金樹の古い雫のことだ。

では古い生命の残滓とは何か?

これがわからなかった。

だが還樹の文化と、黄金樹は永遠の都を滅ぼした上に根付いたこと。

この二つを組み合わせると、一つの仮説が浮かび上がってくる。

それは、大いなる意思は黄金の流星によって永遠の都を滅ぼし、その一帯にいた古き生命を黄金樹によって吸収させることで、黄金樹を成長させたのではないか?

というものだ。


樹は地下の栄養を吸い取り葉を茂らせる。

そしてその葉が散り、それが土地の栄養となる。

樹とはそういうものだ。

では黄金樹は何を栄養に葉を茂らせたのか。

最初から大いなる意思が樹を成長させる栄養を蓄えていた?

その可能性もないことはない。

だがそれ以上に、黄金の流星で滅ぼした永遠の都の古き生命を利用して黄金樹を成長させたほうが可能性が高いのではないかと私は思う。

論理がきれいにつながるのだ。

それに、そう考える根拠はほかにもある。

それが還樹と生命の坩堝、そして聖血の木の芽だ。

一つずつ見ていこう。


根拠1.  還樹と黄金樹信仰

恵みの雫のタリスマンにはこうある。


黄金樹の恵みたる雫

その受領の様を模したタリスマン

HPをゆっくりと回復する

かつて、恵みの雫は尽きぬ滴りであったという

豊穣の時代、けれどそれはごく短く

黄金樹は信仰となっていった


かつて恵みの雫は尽きぬ滴りだった。

けれどそれはごく短かった。

なぜか? 

それは黄金の琥珀、黄金樹の古い雫となった古き生命はしかし有限であり、その生命によって生まれる雫もまた有限であったからだ。

そしてその短き豊穣の時代のあとの黄金樹信仰によって生まれた信仰儀式とは何か?

還樹だ。

では還樹とはどういう儀式か?

それはルーテルやクリストフといった強い祝福を受けた英雄たちが、死んで樹に還り、図1のように樹に取り込まれることだ。

ではなぜそのような儀式が生まれた?


それは、黄金樹による祝福がかつて吸い上げた永遠の都の古き生命だけでは足りず、黄金樹のもたらした強い祝福をまた黄金樹に還さなければならなかったからだ。

黄金樹にもたらされた祝福を黄金樹に再び死をもって還す儀式

それが還樹なのだと私は考える。



根拠2.  生命の坩堝と黄金樹の赤味

オルドビスの大剣にはこうある。

坩堝の騎士の筆頭とされる二名の一方
騎士オルドビスの大剣
原初の黄金は、より生命に近く
故に赤味を帯びていたという
この剣は、その古い聖性を宿している


坩堝とは種々のものが混合している状態や場所、または混合・融合させるもののたとえである。

では生命の坩堝とは何か?

それは様々な生命の残滓が混合している状態や場所だろう。

ではそれがより生命に近く、故に赤味を帯びていたとはどういうことか?


…もしかしてそれは、血の赤なのではないか?

古き様々な生命の残滓が混合し、その血を吸い、真っ赤に染まり成長した黄金樹、いや鮮血樹。

それこそが古い時代、原初の黄金樹だったのではないだろうか?

故に生命に近く、故に赤味を帯びている。

黄金樹の金と、血の赤が混じった赤金色。

そう考えると、なぜ原初の黄金樹は赤味を帯びていたか理解できる。

永遠の都を滅ぼし、そこにいた古き生命を黄金樹によってその血ごと吸い上げたため、原初の黄金樹はその血で朱く染め上げられ、赤味の混じった金色をしていたのだ。


根拠3. 聖血の木の芽


そしてこれは、素材:聖血の木の芽の見た目とも符合する。

聖血の木の芽は以下のようにある。

鮮血を含んだ、育つことのなかった若芽

アイテム製作に用いる素材のひとつ

かつて、幼き聖血を与えられ育てられた若芽が

その原種であるという


これは幼き聖血を与えられ育てられた若芽である。

この芽の色を見てほしい。

血で、赤く染まり、赤味を帯びている。

かつての原初の黄金樹もこの聖血の若芽と同様に、血を吸い、血に染まり、赤味を帯びていたのではないだろうか?


生命の坩堝と獣の特徴

またこの仮説だと、生命の坩堝の祈祷が獣の特徴を持つことにも説明がつく。


坩堝の諸相・尾や坩堝の諸相・角の祈祷には以下のようにある。

古い黄金樹の祈祷のひとつ

それは黄金樹の原初たる生命の力

坩堝の諸相のひとつである

かつて、生命は混じり合っていた


そして祖霊の角飾りには以下のようにある。

祖霊の民の装身具

それは、芽生えかけの角であるという

長く生きた獣は、角に新たな芽生えを迎え

それを永遠に繰り返し、いつか祖霊となるのだと

 

かつて生命は混じりあっていて、その諸相の一つが尾や角だった。

諸相の一つが尾や角であるなら、生命の坩堝には獣の特徴を有するものも取り込まれているということになる。

その取り込まれたものが祖霊の民たちで、彼らもまた生命の坩堝の一部として吸い上げられたのではないだろうか?

祖霊の民たちは永遠の都の周辺で暮らしている。

それはおそらく名も無き永遠の都でも同じことだっただろう。

周辺で暮らしていた彼らも、ともに黄金樹に生命の坩堝として吸収されてしまったのだ。

故に、生命の坩堝の祈祷は獣の特徴を有している。


そしてこのことからなぜ忌み児が生まれ、様々な生命の特徴を持っていたかや混種の成り立ち、祖霊との関係、そしてそれが後に穢れとして扱われた理由も考察できる。

が、長くなってきたし、別のテーマとして扱うべき大きなテーマでもあるので、忌み児や混種についてはまた違う稿で考察するとする。



まとめ

これまでの仮説とその根拠、そしてそこから導き出される結論をまとめよう。

  • 黄金の流星が永遠の都を滅ぼし、その上に根付いたのが黄金樹。
  • 黄金樹とは永遠の都の古き生命を吸い上げて育ち、その生命の力を祝福として狭間の地にもたらした
    • 根拠は還樹と生命の坩堝
  • 還樹とは黄金樹にもたらされた祝福を黄金樹に再び死をもって還す儀式
    • 黄金樹による祝福がかつて吸い上げた永遠の都の古き生命だけでは足りず、黄金樹のもたらした強い祝福をまた黄金樹に還さなければならなかったから還樹の儀式は生まれた
  • 生命の坩堝とは永遠の都の古き生命を混ぜたものであり、それを吸い上げて黄金樹は成長した
    • 故に原初の黄金樹は赤味を帯びた金色をしており、その赤とは古き生命の血の赤である
    • この時祖霊の民も生命の坩堝として吸収されたため、生命の坩堝は尾や角を諸相として持つ

これらを前稿も合わせて時系列に合わせて組み立て直すと以下のようになる。

まず大いなる意思によって黄金の流星が永遠の都に降り注ぎ、永遠の都は滅びた。
そしてその滅びた永遠の都に住んでいた古き生命は黄金樹によって吸い取られ生命の坩堝となり、生命の坩堝を栄養として黄金樹は成長した。
だから原初の黄金樹は赤味を帯びた黄金色をしており、その赤味とは古き生命の血の赤である。
しかし古き生命の量は有限であり、恵みの雫が尽きぬ豊穣の時代はごく短く、黄金樹は信仰となっていった。
その信仰の代表的なものが還樹の儀式であり、黄金樹による祝福がかつて吸い上げた永遠の都の古き生命だけでは足りず、黄金樹のもたらした強い祝福をまた黄金樹に還さなければならなかったから生まれた信仰儀式である。
しかしその循環には穴がある。それこそが――――


以上が、本稿の結論となる。
非常に考察していて楽しい考察だった。
点と点がすべて繋がる感覚。
これこそが考察の醍醐味だろう。
ぜひともこの稿を読んだ方の感想を聞きたい。

また、次はこの考察からつながる、【黄金律とは何か? 運命の死を取り除くことで完成した祝福の循環システム】 について考察したいと思う。






コメント

  1. ジグソーパズルが組み上がり完成した様な考察だと思いました……!
    違和感が無い

    返信削除
    返信
    1. 感想ありがとうございます。。
      この考察に関しては考察を進めながらパズルがカチっとはまっていく感じがして、書いていて楽しかったです。

      削除
  2. 拝読させていただきました
    1つ疑問があります
    以下は狂い火ルートでのハイータのセリフです(出典: https://jitanjin.com/2680/)

    …すべては、大きなひとつから、分かたれた
    分かたれ、産まれ、心を持った
    けれどそれは、大いなる意志の過ちだった
    苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ
    それらはみな、過ちにより生じた
    だから、戻さなくてはならない
    混沌の黄色い火で、何もかもを焼き溶かし
    すべてを、大きなひとつに…


    私はこれを読んで、「大きなひとつ」を「生命の坩堝」と解釈しました
    つまり、多種多様な生命の遺伝子情報を含んだ坩堝という塊がエルデの流星として落着し、そこからこの星の生命が始まったという解釈です
    これは輝石魔術の「源流」に行き着くことで生じる、魔術師の頭部がどろどろに混じり合った塊が「星の種」と呼ばれていることとも合致していると思っています

    余談ですが、異星人が他の星に生命の種を植え付けるという設定は新世紀エヴァンゲリオンにおける第一始祖民族と類似していますが、三本指の思想もまたエヴァンゲリオンにおける人類補完計画と酷似しており、ある種のオマージュのように感じられます

    三本指の言葉どおり、大いなる意思によってすべての生命が生み出されたとするならば、その端緒はエルデの流星と生命の坩堝と考えるのが自然かなと思っています

    玉露さんはこの三本指の言葉についてはどうお考えでしょうか

    返信削除
    返信
    1. なるほど、その解釈は自分の中ではありませんでした。
      そうですね。
      まず、自分の違う考察の、なぜアステールは二体いるのか? の考察で、私はエルデの流星によって名も無き永遠の都は滅ぼされた、と語りました。
      よって、エルデの流星が降る前に、すでに無き永遠の都のような、生物がいる都市はあったと考えています。
      なので、すべての生物がエルデの流星によって始まった、とは思いません。

      また、自分は大きな一つというのは、獣に知識を与えたとされる、五本指のことを指しているのかなと思っています。
      5本指から二本指と三本指に分かれたことを指しているのかな、と。
      ただ、三本指の言う大きな一つが生命の坩堝というのは、あり得ない話ではないかな、とも思っています。
      何もかも焼き溶かして、五本指に戻るというのは少し違和感のある話ですしね。

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    2. 返信ありがとうございます
      私も、生命の坩堝から全て始まったとすると、黄金樹以前の先史時代の処理が難しくなることは引っかかっていました
      ただ、坩堝の騎士の第二形態に竜が混じっているあたり、竜も坩堝から生まれた、=エルデの落着はプラキドサクスのさらに前、という可能性もあるのかなとも思っています

      ただ、玉露さんの考察のほうが歴史の流れは明らかに整理されているので、やはりちょっと難しいですかね
      エルデの落着から黄金樹の成立までそんなに時間がかかっていたような描写もないですし……

      削除

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