火山館の依頼 入館

私はイジーとブライヴが、おそらく大いなる意志と二本指の手で殺されたことで、二本指とそれを従える大いなる意志に対して疑念を抱いた。

いや、それは正しくないな。

疑念は初めて二本指に会った時から、もっと言うとそもそも蘇らされた時から感じてはいた。

ヴァレーの言うことでもないが、自分たちで追放したくせに必要になったから呼び戻すなど、あまりに都合のいい話だったからだ。

だから私の狭間の地に対する疑問を晴らせるなら、知識が得られるならと大いなる意志に敵対するラニの仲間にもなった。

そして大いなる意志に敵対している以上、敵対しているイジーやブライヴが殺されるのも、当然のことだ。

当然のことだが、でもそれと感情はまた別の話だ。

私はどうやら、彼らに思っていた以上に仲間意識を抱いていたらしい。

ラニを温かく見守るイジーも、ラニに忠義を誓い最後まで貫き通したブライヴも、短い間だったが私にとっては大切な仲間だった。

この集まりにいるのも悪くはないなと、そう思える居場所だった。


…だがそれは大いなる意志に奪われた。

敵対しているんだから殺されるのは道理だ。

そして、大切な仲間を奪われた私が二本指に対して憎しみを抱くのもまた道理だろう。

そう考え、どう動くか考えている中、ふとある組織のことを思い出した。

その名は火山館。

大いなる意志に弓引くことを目的としている集団だ。

私は以前その火山館を訪れ、館の主、タニスに勧誘されたことがある。

その時はそこまで大いなる意志に敵意も無かったので断ったのだが、もしかしてあそこなら、大いなる意志と二本指に対して意趣返しをするための方法を知っているかもしれない。

私はそう考え、再度火山館を訪れた。




火山館を訪ねると、思った以上にあっさりとタニスは私のことを歓迎してくれた。

そして私に依頼を出した。

その内容は、同じ褪せ人である古騎士イシュトバーン、彼を殺せという内容だった。

大いなる意志に敵対するなら、その味方である褪せ人を殺せと。


イシュトバーン、その名に聞き覚えはある。

かつてまだ私が狭間の地に来てばかりのころ、洞窟に狼の根城を築いていた獣人を倒す際に共に協力してくれた褪せ人だ。

当時はまだ魔術騎士と呼べるほどの力もなく、斬られればすぐ死ぬような生命力だった私は彼に非常に助けられた覚えがある。

恨みはない。

むしろ同じ褪せ人であり、恩人でもある。

あるが……

それでも、私は大いなる意志に報いを与えたい。

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