考察:セレン先生はなぜ塊になってしまったのか? 魔術の源流へと至る方法と、先生を元に戻す方法について



 セレン先生。

私の、魔術の先生。

彼女は、塊になってしまった。



魔術の源流を復興するため、魔術の源流を極めるため。

そういって、セレン先生はこんな塊になり果ててしまった。

彼女はなぜこうなってしまったのか?

彼女は何を目的に、何をしようとして、こうなってしまったのか。

そして、どうすれば彼女を元の姿に戻すことができるのか。

私は、これらについて研究を続けている。


彼女はなぜ塊になったか?

まずセレン先生がなぜこんな塊になってしまったのか。
その答えは、タリスマン:魔術師塊のタリスマンにある。

魔術師球と呼ばれる学院の悪夢
最初のそれを象ったタリスマン
魔術の威力を大きく高める
輝石魔術には、源流という禁忌がある
魔術師を集めて星の種となす
源流では、これは探究の一手段なのだ


この塊は魔術師球と呼ばれている。

源流を、探求するための手段なのだ。

セレン先生は、源流を復興するために暗躍していた。

これは、そのためのアプローチの一つだったのだろう。


また、彼女が学院でなんと呼ばれていたかを知っているだろうか?

かつて、将軍ラダーンの客将にして魔女セレンの死、魔女狩りジェーレンはこのように語っていた。

ほう、おぬしか

祭りの勇者と、意外なところで会うものだ

まさか、セレンの関係者か?

だが何れにしろ、この女は死んだ

もう、忘れることだ

…この女は、塊の魔女

源流思想に耽り、数えきれぬ魔術師をその手にかけた

レアルカリアの学院史上、最悪の災厄だったのだ


魔女セレンは塊の魔女と呼ばれ、レアルカリアの学院史上、最悪の災厄だった。

そして魔術師球は学院の悪夢であった。

つまり、この魔術師球はセレン先生のオリジナル。

源流を極めるために作成した、研究成果なのだろう。

だから彼女は、塊の魔女と呼ばれた。

おそらく彼女は、学院の魔術師や各地の魔術師を利用して魔術師球を作り、実験を重ねた。

その結果、このアプローチで源流を極めることができると判断した。

そして、源流の魔術師であるアズールとルーサットの体を使い、自らの身を、魔術師球とし、源流を極めようとした。

それが、セレン先生が塊になった理由だろう。


実験結果

では、セレン先生のこのアプローチは成功したのだろうか?
…おそらく、彼女は失敗した。

彼女が魔術師球になった後、先生は魔術:渦巻くつぶてを教えてくれた。
そしてこの魔術には、このような記憶が遺っていた。

魔術学院レアルカリアの輝石魔術のひとつ
渦を巻いて飛ぶ、二筋のつぶてを放つ
足を止めずに使用でき、連続でも使用できる
また、タメ使用で強化される
学院で最も歴史のある、カロロスの教室の魔術
新しい彗星を作り出そうとした失敗作である


新しい彗星を作り出そうとして、失敗したのだ。

カロロス教室というのは、兜:カロロスの輝石頭に記憶されているように、魔術師アズールをその起源とし、彗星の魔術を探求する最古の教室だ。

そして、かつてセレン先生はこのように語っていた。

…ほう、その魔術は…

我が弟子よ、見えたのだな。アズール師に

アズール師は、最初の輝石魔術師。私の最初の師匠だった

お前は、認められたのだよ。あの厳格なアズールに

それは素晴らしいことだ

…後で、ゆっくりと話をしよう。我が弟子よ


アズールはセレン先生の最初の師匠だった。

そして、カロロス教室はアズールが起源とあることから、セレン先生はカロロス教室の出身だったのだろう。

そして、渦巻くつぶてはカロロス教室の魔術で、新しい彗星を作ろうとした失敗作。

つまり、セレン先生は新しい彗星を作ろうとして、失敗したのだ。

彼女の実験は失敗に終わった。


源流へのアプローチ

成功していたのならば、セレン先生の選択だと考え、静観することも考えたが、失敗しているのならば元の状態に戻したい。
そして元の状態に戻す方法を見つけるには、まず彼女がどのようなアプローチで源流へ至ろうとしたのかを、理解しなければならない。

以前した考察、【セレン先生の求めた魔術の源流とは何か? アズールとルーサットが見た光景について】の考察で、私は以下のように述べた。
魔術師アズールは源流を垣間見て、彗星の魔術を見出した
魔術師ルーサットは源流を垣間見て、流星の魔術を見出した
彼らが出会った源流とは、暗黒の落とし子と暗黒の星々、二体のアステールを産みだした天体現象である
二人の魔術師は、二体のアステールから彗星と流星の魔術を見出したのだ


アズールとルーサットは二体のアステールから魔術を見出した。

そしてセレン先生は以前、このように語っていた。

輝石魔術の源流を復興するために、必要なのだ

星の子に、もっとも近づいたその体がな…

 

…ああ、我が弟子よ
またお前に、助けられてしまったな
だが、見よ。カーリアの女王はもういない
アズール、ルーサット両師の体を迎え、学院は源流を極めるのだ
そして我ら落とし子は、いつか輝ける、星の子となるだろう

ここでいう星の子とは、アステールのことを指すはずだ。

アステールがこのように頭に水晶を持っていて、その色がアズールとルーサットの頭の水晶とそっくりなこと。


そして、そのルーサットの肉体を星の子にもっとも近づいた体と言ったことからだ。
そして、魔術師球のタリスマンには、あの魔術師球は星の種と呼ばれる状態だと書かれている。

これらをまとめると、このように考えられる。

星の子とはアステールだ。
そのアステールから、アズールとルーサットが源流の魔術を見出した。
同じように源流の魔術を見出したいセレン先生は、アズールやルーサットを星の子に近づけることで、源流の魔術を見出せないかと考えた。
その手段が魔術師球にして、星の種。
星の子、アステールに成長するための、種。
それこそがあの魔術師球なのだ。


先生が失敗した理由

こう語ると上手くいきそうなアプローチに聞こえるが、実際にはセレン先生は失敗した。
理由はいくらでも考えられるが、個人的には純度も対象も足りなかったんじゃないかと思う。
アズールやルーサットは直接源流と、そこから生まれるアステールたちを垣間見た。
そして、兜:アズールの輝石頭に遺っている以下の記憶のように、 輝石に宿った生命の残滓を読み取るため、脳を頭蓋ごと置き換えた。

源流の魔術師、アズール
その屹立した青緑輝石の頭冠
脳を頭蓋ごと置き換えたそれは
主から切り離された今、ほぼ死んでおり
アズールの源流魔術の威力を高めるが
消費FPも増加してしまう


おそらくあの頭冠の大きな輝石は、アステールの身体を構成していた輝石なのだろう。
それを脳と入れ替えて直結させることで、輝石から、星の子である彼らの生命の残滓を引き出す術を得た。

それに対してセレン先生は、源流も、アステールも直接見ていない。
あくまでアズールとルーサットの体で為した、魔術師球のみだ。
仮に同じ体となったことでアズールとルーサットの記憶を読み取れていたとしても、精々それだけ。
そもそも、輝石魔術は輝石に宿る星の生命の残滓の力を振るう術だ。
それなのに、魔術師球にある輝石は魔術師の生命の残滓が宿った輝石でしかない。
アズールやルーサットに比べて、魔術師という余分なものが多すぎる。
そこから読み取れる生命の残滓は、精々魔術師の基本魔術であるつぶてを、発展させた程度だろう。
そう考えると、セレン先生のアプローチで得た魔術が渦巻くつぶてというのも、当然の結果のように思える。


先生を元に戻す方法

セレン先生のアプローチに対して、辛辣な意見を語ってしまったが、その先生のアプローチだからこそ、彼女を元に戻すこともできるかもしれない。
アズールやルーサットと、セレン先生を比べると、一つ大きな違いがある。
そう、彼女はまだたどたどしくとも話せるのだ。
アズールやルーサットは頭蓋ごと脳を輝石に置き換えているため、話す機能すら、もうない。
それに比べて、セレン先生の本体は、肉体にない。
彼女の本体は、原輝石にある。

セレンの原輝石
魔術師セレンの体内にあった輝石
半ば生体化し、血管の類が見て取れる
原輝石とは、すなわち魔術師の魂である
相性の良い、新しい体に移植すれば
セレンは再び蘇るだろう
我が弟子よ、おぞましいと思うか?

たぶん、魔術師塊の仮面の下に、セレン先生の脳みそはまだあって、そこに原輝石も埋まっているのだろう。
だから彼女は、あのような姿になってもまだ、人の言葉を話すことができる。

ではその彼女をどのように救えばいいか?
簡単だ。
彼女の原輝石を再び、相性の良い新しい身体に移植すればいい。
そうすれば、彼女はまた復活できるはずだ。


復活させるうえでの問題

しかし問題もある。
問題は大きく二つ。
一つは今の状態で仮にも安定しているように見える魔術師球から、セレン先生の原輝石を抜き取った時に、悪影響が現れないかということ。
アステールの体を目標にしているなら、おそらくアステールの身体を構成している輝石のように、彼女の原輝石も他の魔術師の原輝石と組み合わされて繋がっているはずだ。


原輝石が魔術師の魂ならば、そのうちの一つを力づくで抜き取るとろくなことにはならないように思われる。

もう一つは、一つ目にも関連するが、そもそも原輝石を本人の同意なく抜き取って大丈夫なのか、ということ。
セレン先生が自分の意志で原輝石を渡してきた時ですら、彼女はとても苦しそうだった。
それを同意なしに抜き取ること自体が、とても危険なように思える。

このような二つの大きな問題はある。
だけど、それさえ解決すれば、先生を元に戻す道筋は立った。
ならば、あとは研究を積み重ねるだけだ。


まとめ

まとめよう。
  • セレン先生の目的は源流を極め、復興させること
  • 手段は、星の子であるアステールに魔術師球になることで近づき、源流の魔術を見出すこと
  • しかし純度も対象も足りないため、結果は失敗に終わった
  • 彼女を元に戻すためには、彼女の原輝石を抜き取り、新しい相性の良い身体に移す必要がある
  • 問題は色々あるが、実現の筋道は立ったと思われる

セレン先生はまだ生きている。
ブライヴやイジーと違って、まだ生きている。
なら、助ける方法はきっとあるはずだ。

私はあきらめない。
二度と、私の前で私の大切な人を失わせたりなどしない。
絶対に、先生を元に戻してみせる。

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