考察:最後の王、モーゴットの生涯

 



祝福のモーゴット、忌み王モーゴット、そして最後の王モーゴット。

様々な異名を持つ彼と私の因縁は深いものだ。

思えば私が狭間の地で初めて死闘を繰り広げたのもマルギット、つまりモーゴッドだった。

彼は偉大な王で、黄金の都の王で、そして瓦礫の国の王でもあった。

彼がなぜあのような行動をしたのか。

それを紐解くために、彼の生涯をまとめようと思う。


なお、ここで使用する歴史区分は私が作成した狭間の地の歴史年表の歴史区分を使用している。

わからない場合は年表を参考にしてほしい。


ゴッドフレイの征服

【ゴッドフレイの征服】時代にモーゴットは生まれる。双子の弟、モーグもこの時に生まれることになる。

この時、双子は両親に祝福されて生まれた。



この時代に生まれたと考える根拠は、まず生まれたのはゴッドフレイが追放される前なので、【ゴッドフレイの追放】時代の前に生まれているのは確定だ。

巨人戦争以後かについては、巨人戦争中に子供を産むとは色んな意味で考えづらいので巨人戦争後~ゴッドフレイ追放前にあたる、【ゴッドフレイの征服】時代に生まれたと推測した。


ゴッドフレイが最期、燃える黄金樹の前でモーゴットを抱き上げて労りの言葉を投げかけていたことから見ても、ゴッドフレイからモーゴットへの感情に忌むようなものはなかったのだと思われる。

また、ゴッドフレイは坩堝の騎士を率いていた。

角や翼が生えるという特徴から、忌み子は生命の坩堝の諸相が強く反映された存在だ。

その生命の坩堝の祈祷を操る坩堝の騎士を率いたゴッドフレイが生命の坩堝の諸相が出ている忌み子を忌むとは思いづらい。

なので、少なくともモーゴッドはゴッドフレイには生誕を祝福されたはずだ

また女王マリカも、この時代はおそらく忌み子を差別していなかったと思われる。

第一マリカ教会ではマリカの言霊が聞けるが、そこには以下のように残されている。

戦士たちよ。我が王、ゴッドフレイよ

導きに従い、よくここまで戦ってくれた

あの頂に、巨人たちを打ち滅ぼし、火を封じよう

そして、はじめようじゃないか

輝ける生命の時代を

エルデンリングを掲げ、我ら黄金樹の時代を!


輝ける生命の時代を、とあるが、黄金樹にかかわる記述がある生命で思い当たるものは生命の坩堝だ。

なのでこの言葉の生命とは生命の坩堝のことだろう。

よってこの時はまだ生命の坩堝を輝けるものと思っていて、忌むべきものとは見ておらず、巨人戦争の後あたりに生まれたと思われるモーゴットとモーグの誕生をこの時はまだ祝福していたのではないかと思う。


私は、少なくともこの時代は両親に祝福され、モーゴットとモーグは生まれたのだと信じている。



ゴッドフレイの追放

ゴッドフレイが何らかの理由で祝福を奪われ、褪せ人として狭間の地を追放される。
おそらくこの時代に、モーゴットとモーグは幽閉された。
幽閉した人物は、おそらくマリカ=ラダゴンだ。
この後、破砕戦争に至るまでこの二人は幽閉されることとなる。


この時なぜ追放されたかについては、別稿【なぜゴッドフレイは祝福を奪われ褪せ人として追放されたのか?で述べている。興味がある方は読んでほしい。


幽閉された理由はマリカ=ラダゴンの黄金律原理主義の宣言によって、生命の坩堝が穢れと扱われるようになったと考えられるからだ。
ここでマリカ=ラダゴンとしているのは、この時すでにラダゴンがマリカに成り代わっていたと思われることが理由だ。
ラダゴンは黄金律原理主義の信奉者で、この宣言の後からマリカの記述がエルデンリングを砕くまで見受けられないことから、この時期からラダゴンはマリカとなっていたのだと考えている。

そして、この時から生命の坩堝の獣の諸相を持った忌み子は名前の通り忌み嫌われることになった。
マリカの言霊に残っている、黄金律原理主義への移行の宣言が、同時に生命の坩堝からの移行の宣言だと思われるからだ。
そう考えた理由については長くなったため、別稿【忌み子の起源。神聖視から忌み子に変じたのはどの時代か?】で語った。

そしてモーゴットとモーグを幽閉したのはおそらくマリカ=ラダゴンだと考えている。
道具:マルギットの拘束具には以下のようにある。

黄金の魔力を帯びた呪物
忌み子と呼ばれる呪われた者たち
そのただ一人を、特に厳重に拘束するもの
僅かだが、その拘束の魔力は残っており
かつての幽囚、マルギットを
一時的に地に縛るだろう

 

黄金の魔力を帯びた、ということから幽閉したのは黄金樹の力を持つだれか。

そして図1のマルギットの拘束具の中央を見てほしい。


図1 マルギットの拘束具


分かりづらいが、真ん中にある黄金の模様はエルデンリングだ。

モーグやモーゴットを残ったわずかな魔力ですら今もなお拘束するほどの力を持ち、エルデンリングの力を操れる存在。

それはマリカ=ラダゴンしかいない。

よって、悲しいことにこの時モーゴットとモーグは実の親であるマリカ=ラダゴンに拘束され、幽閉されたのだと思われる。

マリカが黄金律を嫌う理由がなんとなくわかる気がしてくる話だ。


ここから破砕戦争に至るまで、モーゴットとモーグは幽囚の身であったと思われる。

この幽囚の時代はひどく陰惨なものだっただろう。

呪血壺に残る記憶にその片鱗が見て取れる。

儀式壺を使った製作アイテムのひとつ

血の君主の紋章が描かれた壺

敵に投げつけ、呪血まみれにする

呪血まみれになった敵には

召喚した霊体が、狂ったように襲いかかる

それは血の君主の、幼き頃の記憶である


この時の経験によってモーグは歪み、血の君主になったのだろう。

そしてモーゴットもまた、歪んでしまった。 



破砕戦争

第二次ローデイル防衛戦。忌み鬼、英雄の屍を築く。黄金樹に揺らぎなし。
夜の騎兵を率いて英雄を狩った彼らは、あらゆる戦士、騎士、そして英雄の死神であった。
彼はただ、黄金樹を守るために戦い続け、黄金樹を守り抜いた。


【破砕戦争】まで時代は飛ぶ。
この時代を語る、二つの石碑に以下の記録が残っている。
第一次ローデイル防衛戦。君主連合、内から瓦解し敗軍となる。血の陰謀、その痕跡あり。

第二次ローデイル防衛戦。忌み鬼、英雄の屍を築く。黄金樹に揺らぎなし。


これらの石碑から、第一次ローデイル防衛戦の時点でモーゴットとモーグは幽囚の身から解放されていたことがわかる。

そうでないと活動ができないからだ。

また防具:忌み鬼のマントには以下のような記憶が残っている。

ボロボロの毛皮を、裸体の上に纏うもの

忌み鬼、マルギットの装束

破砕戦争において、数多の英雄を狩った忌み鬼は

黄金樹に挑み、王たる野心を抱く者たち

そのすべての悪夢である


これらの情報から、破砕戦争においてモーゴットは忌み鬼マルギットとして、黄金樹を守る存在として戦い、多くの英雄たちを屠っていたことがわかる。

そして最後まで彼は黄金樹を守り抜いたのだ。


なぜ彼がこうまでして自分を祝福しなかった黄金樹を守り抜いたのか?

その理由は彼の追憶に遺されている。

黄金樹に刻まれた

忌み王、モーゴットの追憶

祝福なき忌み子として生まれ落ちてなお

モーゴットは、黄金樹の守人であろうとした

愛されたから、愛したのではない

彼はただ愛したのだ


彼はただ愛したのだ。

愛されたから愛したのではない。

ただ愛したから、ただ守りたかったから、懸命に戦い、彼は黄金樹を守り抜いた。



最初の褪せ人たち、円卓

王に至らんと王都を目指す褪せ人たち、すべてがモーゴットに狩られ、屍を晒す。
この時代にモーゴットを超えられた存在は一人もいなかった。


デミゴッドが大いなる意志から見捨てられ、代わりに褪せ人が祝福を受けて王になろうとした時代。
この時代でも彼は英雄狩りとして褪せ人たちを狩り、黄金樹を守っていた。
たとえ大いなる意志から見捨てられたとしても、黄金樹が自分を拒絶し、褪せ人たちを次代の王に選んだとしても、彼は黄金樹を守り抜いた。

彼はきっとこの時すでに王になるには黄金樹を焼いてでも黄金樹の拒絶を超え、エルデンリングを修復しなければならないとわかっていたはずだ。
そうじゃなければ、わざわざ力の一部を割いて禁域、そして巨人たちの山嶺への道を封印する必要はないからだ。
彼はどうすれば王になれるかわかっていた。
そして狭間の地全体のことを考えれば、褪せ人を王にするべきこともおそらくわかっていた。
でも黄金樹を守りたかったからそれができず、結果として狭間の地を停滞し続けた。

これを愚かという人もいるだろう。
狭間の地のすべてが狂う中、自分を祝福しなかった黄金樹を守るために、エルデンリングを修復することを邪魔し続けたのだから。
だが私は彼を責められないし、責めたいとは思わない。
だって、彼にとっては狭間の地もまた、自分を愛さず忌み続けた敵だからだ。
彼はただ黄金樹を愛した。
それだけなのだと思う。


現代

モーゴット、そしてマルギットとして褪せ人を狩り続けるも、最終的に一人の褪せ人に討たれ、死す。
その最後は父、ゴッドフレイの腕の中だったという。


そして現代。
私が狭間の地に流れ着き、そして黄金樹を燃やした、これまでの、そしてこれからの時代。
彼は破砕戦争の時代と同じく、そして円卓の時代と同じく、英雄狩りとしてモーゴットは王都の地を守り続けていた。
またストームヴィル城で出会ったマルギットのように、自分の分身を配置して褪せ人を狩っていた。
ストームヴィル城にいたのは、褪せ人が最初に訪れるデミゴットであることと、ゴドリックが一番弱いからだろう。
ルーンの力を得る前に、褪せ人たちを狩る。
合理的な戦略だ。

そして各地に散らばる夜の騎兵たちもまたモーゴットの配下で、同じように褪せ人たちを狩っていた。
防具:夜騎兵の鎧には以下のようにある。
うっすらと血のこびり付いた、漆黒の鎧
葬送の馬に跨がった、夜の騎兵たちの装備
夜の街道をさまよう騎兵たちは
かつては、忌み鬼に率いられた
あらゆる戦士、騎士、そして英雄の死神である


英雄の死神として、褪せ人たちを狩っていた夜の騎兵たちはモーゴットに率いられた配下で、今も彼の命で褪せ人たちを狩っている。

彼は決して一人ではなかった。 


そして王都にて、私とメリナによって討ち取られ、モーゴットは死んだ。



強い敵だった。

一人では、勝てない敵だったかもしれない。

だけど、これまでに莫大なルーンを力にしてきた私と、強い黄金樹の祈祷と炎の刃を操るメリナと、我が相棒首無し騎士ルーテルの三人には勝てなかった。




そうして彼の生涯は閉じた。

彼は最後にこう言い残している。(追憶【モーゴットの最期の言葉】

…褪せ人よ、お前は愚かだ…

…黄金樹は、すべてを拒んでいる

我らは、見捨てられたのだ

…もう誰も、エルデの王にはなれぬのだ…

…私と、同じようにな…


見捨てられ、王になれぬと理解し、それでもなお黄金樹を守り続けた最後の王モーゴッド。

その彼は、亡骸をゴッドフレイに抱きかかえられて消えていった。

還るべき黄金樹はもうないけれど、それでも彼の魂が安らかに逝けたことを祈りたい。

彼の愛した黄金樹を燃やし、彼を殺した私の言えた義理ではないと分かってはいるけれど。












コメント

  1. いつもお世話になっています。
    弟があんな感じなので余計に頑張ったのかなとか考えてしまうと悲しいです。
    フロムゲーらしいほろ苦さを感じました。

    P.S. マルギットの拘束具の説明文が背景とほぼ同色になってしまっているようです。

    返信削除
    返信
    1. 感想ありがとうございます。
      自分はモーゴットの、彼は愛されたから愛したのではない。ただ愛したのだ、って一文を読んですごい好きになりましたね。
      だからそのうちその生涯をまとめたい人物でした。
      あと説明文についてありがとうございます。
      記事は見直したつもりでしたが、気づいてませんでした……
      投稿画面だけでなく、プレビュー画面でも見返さないとだめですね。

      削除

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