考察:なぜ還樹したはずの英雄が遺灰として召喚可能なのか?




狭間の地を旅した褪せ人ならば、一度は地下墓地とそこに存在する樹の根に取り込まれた人々の死体を見たことがあるだろう。

以下の図1のような光景だ。


図1 樹の根に取り込まれた人々の死体

狭間の地の外にいる人間からしたらなかなかにおぞましい光景だが、あれは狭間の地の人々からしたら最上級の栄誉を持つ埋葬方法なのだ。

その名を還樹。

黄金樹に取り込まれることで、死した後黄金樹の一部になれるという狭間の地の宗教儀式である。

【考察:地下墓地の奥にあった、木の根に取り込まれた人々でも語ったが、我が相棒、首無し騎士ルーテルも還樹を賜ったらしい。

ルーテルいわく

「伝説の遺灰」のひとつ

首無し騎士、ルーテルの霊体を召喚する

霊廟兵の長となる、首のない騎士の霊体

死を纏う槍を振るい、幻影の槍を投じる

ルーテルが殉死し、守り続けた

魂無きデミゴッドが再誕した時

彼女は英雄として、還樹を賜った


とのことで、長年英雄として奉公したうえで賜れる、非常に名誉な死に方らしい。


だがそれはおかしい。

以前ラニが霊喚びの鈴をくれたとき、以下のように語っていた。

それは、霊喚びの鈴でな

黄金樹に還ることのなかった遺灰から、霊を喚ぶことができる

そして霊たちは、一時お前を主とし、かつての戦いを思い出すのだ


そう。

黄金樹に還ることのなかった遺灰から、霊を喚ぶことができるのだ。

ならばなぜ、還樹したはずのルーテルの霊を喚ぶことができるのか?

それが本稿のテーマだ。



壊れた黄金律


黄金律とは、輪廻転生を通さないことによる、黄金樹からの祝福を黄金樹を通して循環させる永久機関のシステムである。
黄金律は死に生きる者を許さない。なぜなら死者の持つ祝福もまた、黄金樹のものだからだ。
そして黄金樹とは、死者からエネルギーを吸収し、そのエネルギーを祝福という形で変換し狭間の地に分け与え、そしてその祝福をまた死者から吸収するという媒介であり変換器であり、黄金律の根幹を維持する装置である。
こうして、黄金樹を中心とした祝福の循環システムは永遠となり、黄金律ははじまった。

黄金律とは、輪廻転生を通さないことによる、黄金樹からの祝福を黄金樹を通して循環させる永久機関のシステムである。
だからこそ樹に還ったものは黄金樹に取り込まれ、新たに産まれ、また祝福という形で狭間の地に降り注ぎ、循環していた。
しかし、すでに黄金律は壊れた
エルデンリングが壊されたことによって。
結果、死者は循環せず、黄金樹に還ることもなくなった。
黄金樹を介した生と死の循環が止まったのだ。

だから、還樹したはずのルーテルは黄金樹に還ることなく、私の喚び鈴に応えてくれた。


還樹した英雄たちの還樹の時期

私が狭間の地で手に入れた英雄の遺灰のうち、還樹した英雄はルーテルを除いて二人いる。
古竜の騎士クリストフと、失地騎士オレグだ。
私の考察が正しければ、彼らもまた黄金律が壊れた後に還樹したはずだ。
黄金律が壊れた後はそもそも黄金樹を通した生と死の循環が壊れているため、黄金樹に還れないのも当然のことだと思うからだ。
私の編纂した歴史年表によれば、黄金律はゴッドフレイの追放の時代の終わりから、黄金律の全盛期の時代の初めあたりのはず。
2人がいつ還樹したかを確認してみよう。

まず古竜の騎士クリストフの遺灰には以下のようにある。
「伝説の遺灰」のひとつ
古竜の騎士、クリストフの霊体を召喚する
王都ローデイルの名高き騎士にして
敬虔な古竜の信徒、クリストフの霊体
古竜の武器たる、落雷の戦技を駆使する
第一次ローデイル防衛戦において
接ぎ木のゴドフロアを捕らえた功により
英雄として還樹を賜っている


第一次ローデイル防衛戦において接ぎ木のゴドフロアを捕らえた功により英雄として還樹を賜っている、とある。

第一次ローデイル防衛戦は破砕戦争の時期。つまり黄金律が壊れた後だ。

よって私の考察に合致している。


また、失地騎士オレグはどうだろうか?

彼の遺灰には以下のようにある。

霊魂の宿った遺灰

失地騎士、オレグの霊体を召喚する

かつて、嵐の王の双翼として知られた一方

失地騎士となったオレグは、祝福王に見出され

百の裏切り者を狩り、英雄として還樹を賜った


明確な時期は書かれていないが、嵐の王が倒されたのはゴッドフレイの追放の時期の中頃当たり。

そのあと祝福王に見出されて百の裏切り者を狩った後に英雄として還樹を賜ったとある。

この祝福王は、以下の歩哨の松明の情報から、モーゴットだと思われる。

黄金樹を守る者たちに与えられる松明

その炎には、特別な祈祷が施され

ヴェールに隠れた刺客の姿を見出せる。

黄金樹と祝福王は、備えている

また再び、陰謀の夜が訪れぬように


陰謀の夜の後、黄金樹を守っていた王とはモーゴットしかいないからだ。

そしてそのモーゴットが歴史の表舞台に立ったのは破砕戦争以降。

つまり黄金律が壊れた後になる。

これも私の考察に合致している。


どちらの英雄の還樹の時期も、私の考察に合致している。

このことからも、この考察の仮説は一定以上の説得力があるものだと思う。

なぜ還樹したはずの英雄が霊喚びの鈴で呼べるのか?

その答えは完全に黄金樹に還ることができたのは黄金律が完成して機能している間のみであり、それ以外の時期では黄金樹が霊のすべてを吸収することができなかったからである。

そしてこの考察の結論は【黄金律とは何か? 運命の死を取り除くことで完成した祝福の循環システムで語った黄金律とは祝福の循環システムである、という結論を補完するものにもなったと思う。

少なくとも、還樹したはずなのに喚ぶことができる英雄たちが皆黄金律が壊れた後であることから、黄金律が壊れたことで還樹ができなくなったとまでは断言して良いと思われる。


まとめ

まとめよう。
  • 黄金樹に死して還ったはずの英雄は本来霊喚びの鈴では呼べないはず
  • なのにルーテルなどを喚ぶことができる
  • その理由は完全に黄金樹に還ることができたのは黄金律が完成して機能している間のみであり、それ以外の時期では黄金樹が霊のすべてを吸収することができなかったからである
  • この結論は他の二人の英雄の還樹の時期にも合致している
  • このことから、黄金律は還樹に関係していたシステムであることまでは断言して良いように思える


狭間の地の旅において霊喚びの鈴には非常に助けられた。
これがなければ狭間の地にいた幾多の強敵たちには勝てなかっただろうと思うぐらいに。
だが正直この技術は非常に謎が多い。
この霊喚びの鈴の元の持ち主を含めて謎だらけだ。
今後もこれらの謎について考察を進めていきたい。

コメント

  1. 祝福王=モーゴットなのでオレグは黄金律が壊れた後に還樹されたかと

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    1. コメントありがとうございます。
      あー、祝福王についてはどちらかは悩みましたが、モーゴットは祝福のモーゴットであって、彼を王と呼ぶ人物は誰もいなかったこと。
      嵐の王が倒れた時期はゴッドフレイの征服の時期であることから、破砕戦争だと離れすぎているな、と思ったのでマリカから祝福を受けた王、ゴッドフレイのこととしました。
      個人的には壊れた後のほうが考察の整合性はつくんですけどね。
      あと仮にもリムグレイブはゴドリックの土地なので、破砕戦争後にモーゴットの部下としてリムグレイブの辺境の英雄墓に埋葬されるのはおかしいな、とも判断しました。

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  2. 還樹については作中で具体的な説明がなく、考察するしかない単語ですね。
    自分は逆に死んで黄金樹に記録された英雄やデミゴットが復活するための儀式が還樹や死衾だと考えていました。
    霊廟騎士や罠だらけの英雄墓、還樹の番犬はそれまで遺体や装備を守護しているのだと思います。

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    1. 感想ありがとうございます。
      あー、なるほど。そういう捉え方もありますね。
      ただ還樹を正しい死に方と呼ぶことや、墓地の最奥にたくさんの死体が根に取り込まれていることから、自分は還樹とは埋葬方法の一種で、鳥葬の樹版だととらえています。

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  3. 歩哨の松明で祝福王は陰謀の夜の後の人物だと明記されておりますので恐らくはゴッドフレイではないかと。ギデオンから祝福のモーゴッドと呼ばれ、他から忌み王と称されていたモーゴッドが祝福王ではないかなと思います。裏切り者についても祝福王がモーゴッドだと考えると王座を狙う者(褪せ人)達が当てはまりますのでオレグさんは多くの英雄が死んだとされる第2次ローデイル防衛線などで活躍したんじゃないかなと個人的には思っています。

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    1. コメントありがとうございます。
      歩哨の松明完全に見逃してました。
      たしかにこれだと祝福王はモーゴットですね
      記事も訂正します。
      情報ありがとうございました。

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  4. こんにちは。いつも楽しく考察を拝読させていただいております。
    本稿と木の根の話を読んで思い至ったことがあります。
    地下墓地の最奥では、よく根脂が採れますよね。これを人の死体から滲み出た薄気味悪いものだなと感じていました。
    一方、本稿を基に、木の根に絡む人は還樹の途上にあるのだと考えると、根脂もまたその途上にある1つの形態なのかな、と思い至りました。
    生命の原初たる坩堝、その坩堝の名を関する騎士たちの鎧は土色に近い橙色でした。
    根脂も橙色であることを考えると人から生命のエッセンスを抽出したものが根脂、という見方もできます。

    ここから更に考えを飛躍させます。
    テーマは、協力マルチで召喚するプレイヤーの霊体の色が何故橙色なのか。
    初見のときは、従来の白は今作では遺灰カラーだから別の色が当てられたのだろうが、何故この色をチョイスしたのかな、と不思議でした。
    本稿を読んだ後で考えると、遺灰の色が白、協力プレイヤーが橙色とした明確な理由があるように思えます。
    輪廻転生から外れた者たちは、生命の理から外れ、生命のエッセンスだけが黄金樹に吸収され、その器が遺灰として残ったのではないか。エッセンス、すなわち橙色が抜かれて、遺灰は白色となる。
    一方で、エルデの王を目指す、すなわち輪廻転生を復活させようと動くプレイヤーたちは、生命のエッセンスを抜かれることなく存在するから、鉤指の霊体は橙色となる。
    鉤指を呼び出す前準備として使う鉤呼びの指薬は、橙色の落葉花から作成できます。これに紐付けて考えると、生命のエッセンスの結実とも見える落葉花から、生命のエッセンスを与えられた結果として橙色になる、とも考えられます。

    とここまで自己満足でいろいろと語りましたが、お陰様でフロム脳を刺激されて、ワクワクできました。ありがとうございます。
    今後も考察の投稿を楽しみにしています!

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    1. いつも読んでいただきありがとうございます。
      色から考察するのは面白い観点ですね。
      なんで協力の霊体の色が橙なのかを考えたことはなかったです。
      たしかにあれらの色にも探ると意味があるのかもしれない、、、

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